グリースは増ちょう剤の種類によって特性が大きく異なり、選定を誤ると焼き付き・漏れ・寿命短縮といったトラブルに直結します。
この記事では、代表的なグリース3種類(リチウム・ウレア・カルシウム)の特徴と違い、適切な選定基準、混合時の注意点まで、現場の保全担当者が知っておくべきポイントを詳しく紹介します。
グリースの基本構造と種類が分かれる理由
グリースは単一の油ではなく、複数の成分が組み合わさった半固体の潤滑剤です。種類の違いを理解するには、まずその基本構造を押さえる必要があります。
原因①:グリースは「基油+増ちょう剤+添加剤」で構成される
グリースは大きく3つの成分から構成されています。それぞれの役割と比率を理解することで、グリースの種類の違いがどこから生まれるのかが見えてきます。
| 成分 | 役割 | 含有比率の目安 |
|---|---|---|
| 基油 | 実際に潤滑機能を担う油分。鉱物油・合成油など | 約70〜90% |
| 増ちょう剤 | 基油を保持する繊維状・スポンジ状の構造体 | 約5〜25% |
| 添加剤 | 酸化防止・極圧性・防錆など機能を付与 | 約1〜10% |
グリースの「種類」とは、主にどの増ちょう剤を使っているかで分類されます。リチウム系・ウレア系・カルシウム系などの呼び名は、すべて増ちょう剤の違いを指しています。
原因②:用途に応じて求められる性能が異なる
設備によって運転温度・湿度・荷重・回転数は大きく異なります。すべての条件に万能なグリースは存在せず、用途ごとに最適な種類が分かれているのが実情です。
- 高温下で使われる軸受 → 耐熱性が高いウレア系が選ばれることが多い
- 水がかかる環境 → 耐水性に優れるカルシウム系やリチウム複合系が候補
- 一般的な汎用用途 → コストと性能のバランスからリチウム系が標準
- 食品工場の機械 → H1認証グリースなど食品グレードが必須
原因③:増ちょう剤の組み合わせで「複合石けん基」も存在する
近年は単一の増ちょう剤だけでなく、複数を組み合わせた「複合石けん基」グリースも一般化しています。例えば「リチウム複合(リチウムコンプレックス)」は、通常のリチウム系よりも滴点(融け始める温度)が大幅に高く、より厳しい条件で使用できます。
リチウム・ウレア・カルシウムの違いと選定方法
ここからは、設備保全の現場で最もよく目にする3種類のグリース(リチウム系・ウレア系・カルシウム系)の特徴を、選定基準とあわせて整理します。
ステップ①:3種類の主要グリースを一覧で比較する
まずは全体像を把握しましょう。以下の表は、増ちょう剤ごとの基本特性をまとめたものです。実際の数値は製品ごとに差があるため、あくまで一般的な傾向としてご覧ください。
| 項目 | リチウム系 | ウレア系 | カルシウム系 |
|---|---|---|---|
| 使用温度範囲の目安 | -20℃〜120℃前後 | -20℃〜150℃以上 | -20℃〜70℃前後 |
| 滴点の目安 | 180℃前後 | 250℃以上 | 90〜100℃前後 |
| 耐水性 | 良好 | 良好 | 非常に良好 |
| 機械的安定性 | 良好 | 非常に良好 | やや劣る |
| 主な用途 | 汎用軸受・産業機械全般 | 電動モーター・高温軸受 | 水まわり設備・低速軸受 |
| コスト感 | 標準 | やや高め | 標準〜やや安価 |
ステップ②:リチウム系グリースの特徴
リチウム系は、世界的に最も流通量が多い汎用グリースです。性能・価格・入手性のバランスが良く、特に指定がなければリチウム系が選ばれるケースが多いと言えます。
ステップ③:ウレア系グリースの特徴
ウレア系は、増ちょう剤に金属を含まない有機系のグリースです。高温下での耐久性が非常に高く、長寿命グリースとして電動モーター・製鉄設備・自動車補機類などで広く使われています。
- 滴点が250℃以上と非常に高く、高温環境に強い
- 機械的安定性に優れ、長期間使っても柔らかくなりにくい
- 酸化安定性が高く、グリース寿命が長い傾向にある
- 低温下では硬くなりやすい製品もあるため、低温始動には注意が必要
ステップ④:カルシウム系グリースの特徴
カルシウム系は、耐水性に最も優れたグリースです。一方で滴点が90〜100℃前後と低く、高温環境には向きません。水がかかる港湾設備や食品関連の低速軸受などで活躍します。
ステップ⑤:グリースを切り替えるときの注意点
設備に使うグリースを変更する際は、増ちょう剤の互換性に十分な注意が必要です。特に異なる種類のグリースが混ざると、性能が大きく低下するケースがあります。
切り替え時は、可能であれば軸受を分解洗浄してから新しいグリースを充填する方法が最も確実です。分解が難しい設備では、新しいグリースを多めに補給して古いグリースを押し出す「フラッシング」も有効な手段です。
近畿インペリアルの解決事例
創業60年以上、累計約1,000設備以上の導入実績を持つ近畿インペリアルでは、グリース選定や切り替えに関するトラブルを数多く解決してきました。
近畿インペリアル 導入事例一覧はこちら
よくある質問(FAQ)
まとめ
- グリースの種類は主に「増ちょう剤」の違いで分類され、リチウム系・ウレア系・カルシウム系が代表的です。
- リチウム系は汎用性とコストバランスに優れ、中温域の一般軸受に幅広く対応します。
- ウレア系は耐熱性・長寿命性に優れ、電動モーターや高温軸受で活躍するグリースです。
- カルシウム系は耐水性が非常に高く、水まわり設備や低速軸受に適しています。
- 異なる増ちょう剤のグリースを混合すると軟化や分離が起こるケースがあるため、切り替え時は既存グリースを除去してから補給することをお勧めします。
グリースの種類選びや切り替えでお困りの場合、まずはお気軽にご相談ください。
豊富な実績と約1,000設備の導入経験を持つ専門スタッフが対応いたします。
