TOPkeyboard_arrow_right潤滑コラム一覧keyboard_arrow_right

食品機械用潤滑油「H1グレード」とは?NSF認証品の選定ガイド

潤滑コラム

食品機械用潤滑油「H1グレード」とは?NSF認証品の選定ガイド

公開日:2026/5/13

更新日:2026/5/13

食品工場の潤滑剤混入リスクを抑えるNSF H1規格の基本と、H2・3Hとの違い、現場での選定ポイントを解説します。

「食品工場で使う潤滑油は、本当にこのままで大丈夫だろうか」と不安を感じている設備担当者の方は少なくありません。HACCPやFSSC22000への対応が進むなか、潤滑剤の混入リスクへの対策は避けて通れない課題です。

この記事では、食品機械用潤滑油の国際基準であるNSF H1グレードとは何か、H2や3Hとの違い、そして現場で迷わない選定基準を解説します。読み終えるころには、自社設備にどのような油種を選ぶべきかの判断軸が明確になります。

なぜ食品機械にH1グレードが求められるのか

食品工場の設備担当者にとって、潤滑剤の選定は単なる機械保全の問題ではありません。万が一の混入時に消費者の健康へ影響を及ぼす可能性があるため、安全性の観点から特別な配慮が必要です。ここでは、H1グレードが求められる背景を4つの観点から解説します。

背景①:通常の工業用潤滑油には食品への混入リスクがある

一般的な工業用潤滑油には、添加剤として人体への影響が懸念される成分が含まれている場合があります。食品との偶発的な接触が起こった際、消費者の健康被害につながる可能性があるため、食品工場では特別な安全基準を満たした潤滑剤が必要とされます。

注意:H1以外の工業用潤滑剤は食品への混入が認められていない NSF H1認証品の食品への混入許容濃度は10ppm以下とされていますが、H1以外の工業用潤滑剤は、たとえ微量であっても食品への混入は認められていません。食品との接触可能性がある箇所では、必ずH1グレード品を選定することが基本です。

背景②:HACCP・FSSC22000などの食品安全規格への対応

HACCP(ハサップ)は食品衛生の国際的な管理手法で、製造工程における危害要因を分析し、重要管理点を定めて安全性を確保します。FSSC22000はその発展形となる食品安全マネジメントシステムです。これらの規格では、潤滑剤の混入リスク対策として、以下のような優先順位が示されています。

  • 順位1:潤滑剤が食品と接触しない構造にする(機械設計の見直し)
  • 順位2:H1グレード以外の潤滑剤を使う場合は、食品との接触可能性を完全に排除する
  • 順位3:食品との偶発的接触が起こり得る箇所には、NSF H1認証品を使用する

現場の実態としては、機械設計の根本的な見直しは難しいケースが多いため、H1グレード潤滑剤の採用が現実的な解決策となります。

背景③:NSF認証はグローバルスタンダード

日本国内には食品機械用潤滑剤の独自認証制度がまだ整っていないため、国際的に認知されているNSF(National Sanitation Foundation International)の認証が事実上のスタンダードとなっています。NSFはアメリカに本部を置く第三者認証機関で、食品安全に関する登録・認証業務を世界各国で実施しています。

ポイント:NSF認証の4つの主要カテゴリ 食品機械用潤滑剤の分類は、用途と接触リスクによって細かく区分されています。次のセクションで、現場でよく使われるH1・H2・3Hの違いを詳しく見ていきます。

背景④:取引先からの要求や輸出対応への備え

大手食品メーカーや海外取引先からの監査・要求事項として、NSF H1認証品の使用が条件となるケースが増えています。特に輸出を視野に入れる食品事業者にとって、H1グレードの採用はビジネス継続の前提条件となりつつあります。

NSF H1グレード潤滑油の選び方5つの基準

H1グレードと一口に言っても、製品の種類は多岐にわたります。自社設備に合った1本を選ぶための5つのステップを解説します。

ステップ①:NSFカテゴリ(H1・H2・3H)を正しく理解する

NSF登録潤滑剤は、用途別に複数のカテゴリに分かれています。混同しやすい3つの規格の違いを整理しました。

規格用途食品との接触主な使用箇所
NSF H1食品機械用潤滑剤偶発的な接触が許容される(10ppm以下)ベアリング、ギア、チェーン、油圧、コンプレッサーなど
NSF H2食品と接触しない箇所用の潤滑剤接触は認められない食品と完全に隔離された機械部位
NSF 3H離型剤・直接接触用直接接触が認められるベーキングパン、調理容器、まな板など
注意:H2はH1の代替にならない H2は「食品と接触しない箇所」が前提です。食品と接触する可能性がある生産ラインで使用することはできません。サプライヤーがH2認証のみを提示している場合、その製品を食品接触箇所に使うことはできない点に注意が必要です。

ステップ②:設備の運転条件に合った粘度・性能を選ぶ

食品機械用とはいえ、潤滑油としての基本性能は妥協できません。設備の運転条件に応じて、以下の項目を確認します。

  • ISO VG(粘度グレード)が設備メーカーの推奨と合っているか
  • 使用温度範囲(低温始動性・高温耐久性)が現場環境に適合するか
  • 耐水性・耐スチーム性が必要な箇所か(殺菌洗浄が多い食品工場では重要)
  • 極圧性・耐摩耗性が要求される機械か(ギアボックスやコンベアなど)

ステップ③:ISO 21469認証の有無を確認する

NSF H1は配合内容のみを審査する「登録」制度です。一方、ISO 21469は原材料調達・製造・出荷・運搬の各工程に対して厳しい管理基準を設けた「認証」制度です。より高い安全性を求める場合は、NSF H1登録に加えてISO 21469認証を取得している製品を選ぶと安心です。

ISO 21469認証品が特に効果的なケース 輸出向け食品工場、大手食品メーカーの監査対応、FSSC22000の認証取得を目指す工場、海外取引先からの要求が厳しい現場では、NSF H1登録に加えISO 21469認証を取得した製品の採用が推奨されます。

ステップ④:合成油か鉱物油かを使用環境で見極める

H1グレードの潤滑油にも、ベースオイルの違いによって特性が異なります。多くの現場で採用が進んでいる合成油と、コスト面で選ばれる鉱物油(ホワイトオイル系)を比較します。

項目合成油タイプ鉱物油(ホワイトオイル)タイプ
耐熱性高い(高温機械に対応)標準
低温始動性優れる標準
酸化安定性長寿命標準
初期コスト高め低い
更油サイクル長い(トータルコスト低減)短め

過酷な温度条件や長期間の更油間隔を狙う場合は合成油タイプが有利です。標準的な運転条件であれば鉱物油タイプでも十分な性能を発揮します。

ステップ⑤:グリースは増ちょう剤の種類まで確認する

H1グレードのグリースを選ぶ際は、ベースオイルだけでなく増ちょう剤の種類にも注意が必要です。アルミニウムコンプレックス、リチウムコンプレックスなど、増ちょう剤によって耐水性・耐熱性・耐荷重性が大きく異なります。

注意:グリースの混合には注意が必要 異なる増ちょう剤のグリースを混合すると、急激な軟化や分離が起こるケースがあります。グリースを切り替える際は、既存グリースを除去してから補給することをお勧めします。

近畿インペリアルの解決事例

創業60年以上、累計約1,000設備以上の導入実績を持つ近畿インペリアルでは、食品工場におけるH1グレード潤滑剤への切り替えや、HACCP対応に関する数多くの相談を解決してきました。

解決事例を多数掲載中 「どのような条件で」「どのような油種に切り替えて」「どんな効果が出たか」を具体的にご紹介しています。食品工場・飲料工場の事例も数多く掲載しており、自社設備に近い事例もきっと見つかります。
近畿インペリアル 導入事例一覧はこちら

よくある質問(FAQ)

NSF H1の潤滑油は本当に食べても安全ですか?
「食べても安全」という表現は正確ではありません。NSF H1は「食品との偶発的な接触が許容される」潤滑剤であり、混入許容濃度は10ppm以下とされています。意図的な摂取を前提とした製品ではないため、あくまでも万が一の混入時のリスクを最小化するためのものとご理解ください。
食品工場のすべての設備をH1グレードに切り替える必要がありますか?
必ずしもすべてを切り替える必要はありません。食品との接触可能性がある箇所はH1グレード、完全に隔離された箇所はH2でも問題ないとされています。ただし、HACCPの考え方では、食品との接触リスクを完全に排除できない箇所はH1を選ぶのが安全です。設備配置や生産ラインの状況に応じて、専門家と相談しながら判断するのが現実的です。
H1グレードに切り替えるとコストは上がりますか?
単価ベースでは一般工業用潤滑油より高くなる傾向があります。ただし、合成油タイプのH1グレードは更油サイクルが長いため、トータルコストで見ると一般油と同等以下になるケースもあります。導入時には初期コストだけでなく、ライフサイクルコスト全体での比較検討が重要です。
H1グレードの潤滑剤を使えば、HACCP認証が取れますか?
H1グレードの使用はHACCPやFSSC22000で求められる衛生管理項目の一部に対応するものであり、それだけで認証が取得できるわけではありません。原料管理、製造工程管理、従業員衛生など総合的な対応が必要です。潤滑剤の選定は、認証取得に向けた重要なピースの一つと位置づけられます。
既存の工業用潤滑油からH1グレードへの切り替え時に注意することは?
既存油と新規H1グレード油の相溶性を確認することが重要です。異なる種類のベースオイルや添加剤同士は相性が悪い場合があり、フラッシング(洗浄油での内部洗浄)が必要になるケースもあります。また、グリースの切り替え時は、既存グリースを除去してから補給することをお勧めします。事前に潤滑剤メーカーや専門商社へ相談することで、トラブルを未然に防げます。

まとめ

  1. NSF H1は食品との偶発的接触が許容される食品機械用潤滑剤の国際基準で、混入許容濃度は10ppm以下
  2. H1(食品接触可能性あり)・H2(食品と非接触)・3H(離型剤)の違いを正しく理解して使い分けることが基本
  3. 選定時はNSFカテゴリ・粘度や性能・ISO 21469認証・ベースオイル(合成か鉱物か)・グリースの増ちょう剤の5つを確認する
  4. HACCPやFSSC22000への対応、海外取引や監査対応の観点からも、H1グレードの採用は実質的な必須条件になりつつある
  5. 切り替え時は相溶性の確認やフラッシングが必要なケースもあるため、専門家への事前相談がトラブル防止につながる
どのような油種に切り替えるべきか迷ったら専門家へ 食品機械の潤滑剤選定は、安全性と機械性能の両立が求められる難しい判断です。近畿インペリアルでは、食品工場の設備条件に合わせた最適な油種選定をサポートしています。
食品工場の導入事例を見る

食品機械の潤滑剤選定でお困りの場合、まずはお気軽にご相談ください。
豊富な実績と約1,000設備の導入経験を持つ専門スタッフが対応いたします。

設備トラブルを今すぐ相談する 潤滑ガイドブックを無料でダウンロードする
この記事を書いた人
フミ
近畿インペリアル株式会社 営業部 主任

工業用潤滑剤の専門商社に5年間勤務。適油選定・オイル分析サポートから現場での更油作業まで自ら担当し、鉄鋼・食品・プラントなど多業種の設備保全を支援。営業担当としてお客様と現場に向き合い続けた実体験をもとに、「現場の担当者が本当に知りたいこと」を軸に記事を執筆しています。

設備や使用環境に応じた潤滑ノウハウを基礎から解説!

潤滑ガイドブック

ご登録のメールアドレスに資料を送信いたします。

無料で相談可能です

見積もり、潤滑剤の選定、トラブルのご相談など、専門スタッフが対応します。お気軽にお問い合わせください。

今すぐお問い合せ

1営業日以内に担当者がお応えします。