ベアリングの焼付きは、その多くが潤滑不良とグリース選定のミスに起因しています。逆にいえば、原因を正しく押さえてグリースを選び直すだけで、トラブルの再発は大きく減らせます。
この記事では、ベアリング焼付きの代表的な原因5つと、潤滑不良を防ぐためのグリース選定の考え方を、現場目線で詳しく紹介します。
ベアリングが焼き付く5つの原因
ベアリングの焼付きは、転動体(ボールやころ)と軌道面の間で異常な摩擦熱が発生し、金属同士が溶着・固着してしまう現象です。一度焼き付くとベアリング交換だけでなく、軸の損傷や周辺部品の二次被害につながるケースも珍しくありません。
現場で多く見られる焼付きの原因を、発生頻度が高いものから順に5つ整理します。
原因①:グリース不足・油膜切れ
最も多い焼付き原因が、単純なグリース量の不足です。給脂間隔が長すぎたり、給脂量そのものが少なかったりすると、転動面に十分な油膜が形成されず、金属接触による摩擦熱が一気に上昇します。
特に高温環境では基油の蒸発が早く、計画より早期にグリースが枯渇しているケースが多く見られます。「半年に1回給脂しているから大丈夫」と思っていても、実際にはグリースがほぼ消失している現場は少なくありません。
原因②:グリース種類の選定ミス
運転条件に合っていないグリースを使い続けていると、本来発揮されるべき潤滑性能が出ず、徐々に焼付きへと進行します。たとえば、低温用のグリースを高温環境で使い続けるとちょう度が低下して漏れやすくなり、結果として油膜切れを起こします。
逆に高温用の硬めのグリースを低速・低温の用途に使うと、ベアリング内部にグリースが供給されにくく、起動時の潤滑不足を招くこともあります。
原因③:異物・水分の混入
グリース内部に金属粉・砂塵・水分などの異物が混入すると、転動面に微細な傷が生まれ、その傷を起点に温度上昇と摩耗が進行します。食品工場の洗浄水、屋外設備の雨水、製鉄所のスケールなど、業種ごとに混入しやすい異物は異なります。
原因④:過大荷重・高速回転(運転条件の過酷化)
導入当初の設計よりも、現在の運転条件のほうが過酷になっている設備はよくあります。生産能力アップのためにライン速度を上げた、付帯設備を増設して荷重が増えた、といったケースです。
この場合、当時選定したグリースのままでは耐えられず、焼付きに至ります。dn値(軸径×回転数)が高い条件では、より低粘度・高耐熱グリースへの見直しが必要です。
原因⑤:軸受の取付・芯出し不良
機械的な取付精度の問題も焼付きの原因です。軸とハウジングの芯がずれた状態(ミスアライメント)で運転すると、転動体に偏った荷重がかかり、局所的に温度が上昇します。
圧入時のハンマー打撃で内輪に微小なくぼみができている場合や、嵌め合いが緩くて内輪が空転している場合も、結果的に焼付きへ進行します。
| 原因 | 主な発生状況 | 初期サイン |
|---|---|---|
| グリース不足 | 給脂間隔が長い・高温環境 | 異音・温度上昇 |
| 選定ミス | 運転条件と仕様の不一致 | グリース漏れ・変色 |
| 異物混入 | シール劣化・洗浄水暴露 | 振動値の増加 |
| 過大荷重・高速 | 増産・改造後の運転 | 急激な温度上昇 |
| 取付不良 | 更新・修理後の運転 | 初期段階での異音 |
潤滑不良を防ぐグリース選定の方法
焼付きを防ぐ最も実効性の高い対策は、運転条件に合ったグリースを選び、適切な量と間隔で給脂することです。ここでは現場で実践しやすい選定手順をステップで紹介します。
ステップ①:運転条件を数値で整理する
選定の出発点は、対象設備の運転条件を曖昧さなく数値化することです。感覚や経験ではなく、必ず現場で測定・確認した数値を使います。
- 軸受温度(外輪温度の実測値・連続運転時)
- 回転数(rpm)と軸径(dn値の算出用)
- 荷重条件(連続荷重・衝撃荷重の有無)
- 環境条件(粉塵・水分・薬品・屋内外)
- 運転時間(連続運転か断続運転か)
ステップ②:増ちょう剤と基油の組み合わせを決める
グリースの性能は、主に「増ちょう剤」と「基油」の組み合わせで決まります。それぞれに得意分野があるため、運転条件にマッチさせる必要があります。
| 増ちょう剤 | 耐熱性 | 耐水性 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| カルシウム石けん | 低(〜80℃) | 非常に良 | 低温・水暴露環境 |
| リチウム石けん | 中(〜130℃) | 良 | 一般機械・汎用 |
| リチウムコンプレックス | 高(〜150℃) | 良 | 高温・高荷重用 |
| ウレア | 高(〜160℃) | 良 | 製鉄・連続運転 |
カルシウム系グリースは耐水性に優れる一方で耐熱温度が比較的低いため、低温かつ水分にさらされやすい環境で力を発揮します。古くから使われてきた増ちょう剤で、屋外設備や水回りの摺動部などで採用されることが多いタイプです。
基油についても、鉱物油では足りない条件(高温・低温・長寿命要求)では合成油(PAO・エステル)への切り替えで大幅な改善が見込めます。
ステップ③:ちょう度(NLGI No.)を運転条件に合わせる
ちょう度はグリースの「硬さ」を示す指標で、NLGI No.0〜3が一般的に使われます。低速・低温では柔らかめ(No.0~1)、高速・高温では硬め(No.2〜3)が基本です。多くの汎用機械ではNo.2が標準となっています。
ステップ④:適正な給脂量と給脂間隔を決める
選定したグリースを「いつ・どれだけ入れるか」も同じくらい重要です。給脂量はベアリング空間容積の30〜50%が目安で、入れすぎは攪拌熱を生み逆効果になります。給脂間隔はメーカーの計算式や運転温度から算出するのが基本です。
ステップ⑤:定期的にオイル分析・振動診断で検証する
グリースを切り替えた後も、必ず効果検証を行います。グリース分析(鉄分・水分・酸化度の測定)や振動診断を組み合わせれば、焼付きの兆候を早期に捕捉できます。創業60年以上の経験から見ても、分析による「見える化」を取り入れた現場では、焼付きトラブルが大幅に減少しています。
近畿インペリアルの解決事例
創業60年以上、累計約1,000設備以上の導入実績を持つ近畿インペリアルでは、ベアリングの焼付きや潤滑不良に関するトラブルを数多く解決してきました。
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よくある質問(FAQ)
まとめ
- ベアリング焼付きの主な原因は、グリース不足・選定ミス・異物混入・過大荷重・取付不良の5つに集約される
- 原因の多くは、運転条件に合った適切なグリース選定と給脂管理で予防できる
- グリース選定は「運転条件の数値化→増ちょう剤と基油の選択→ちょう度の決定→給脂量と間隔の設計→分析による検証」の5ステップで進める
- シールの劣化や取付精度などの機械的要因も、潤滑管理とあわせて点検することが重要
- 異なる増ちょう剤のグリースを混合する際は、既存グリースを除去してから補給する
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