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軸受けの異常発熱を招く4つの原因とグリース選定の正しい対処法

潤滑コラム

軸受けの異常発熱を招く4つの原因とグリース選定の正しい対処法

公開日:2026/4/17

更新日:2026/4/25

軸受けが熱を持つ根本原因を解説し、グリース種類・粘度・封入量の選定手順と再発防止策を詳しく紹介します。

軸受けが異常に熱くなる——そんな経験をお持ちの設備担当者の方は少なくありません。手で触れられないほどの熱さや、焦げたような臭いが出ている場合、放置すれば軸受けの焼き付きや設備の緊急停止につながる深刻なトラブルです。

軸受けの異常発熱の多くは、グリースの種類・粘度・封入量の選定ミスや、補給管理の不備が根本原因です。この記事では、異常発熱を招く4つの主な原因と、現場での適切なグリース選定・管理の手順を具体的に解説します。

軸受けが異常発熱する4つの原因

軸受けの発熱は、ある程度は正常な摩擦熱として許容されます。しかし、軸受け表面温度が周囲温度より40〜50℃以上高くなっていたり、運転中に急激な温度上昇が見られたりする場合は、何らかの異常が起きているサインです。

原因を特定せずにグリースを追加補給するだけでは、根本的な解決にはなりません。まずは発熱の原因を4つの観点から整理します。

軸受け異常発熱の主な原因4つ 粘度の不一致 / グリースの封入量の過不足 / グリース劣化・汚染 / グリース種類(増ちょう剤)の不適合

原因①:グリースの粘度(基油粘度)が運転条件に合っていない

軸受けに使用するグリースの基油粘度(cSt)が、運転回転数や温度に対して合っていない場合、摩擦が増大して発熱につながります。

高速・軽荷重の軸受けには低粘度グリース、低速・高荷重の軸受けには高粘度グリースが適しています。この組み合わせが逆になると、油膜が形成されにくくなり、金属接触による摩擦熱が生じます。

運転条件 推奨される基油粘度 粘度不一致による影響
高速・軽荷重(モーター、工作機械主軸など) 低粘度(46〜100 cSt程度) 高粘度すぎると攪拌抵抗で発熱
低速・高荷重(圧延機、搬送コンベアなど) 高粘度(150〜460 cSt程度) 低粘度すぎると油膜切れで摩耗・発熱
高温環境(炉周辺、乾燥機など) 高粘度かつ耐熱性グリース 耐熱不足だとグリース流出・酸化で焼き付き

原因②:グリースの封入量が多すぎる(過剰充填)

グリースを多く入れれば安心、と考える現場は少なくありません。しかし実際には、グリースの封入量過多が発熱の最も多い原因のひとつです。

グリースを過剰に充填すると、軸受け内部でグリースが攪拌されて大きな抵抗が生じます。この攪拌抵抗が熱に変わり、軸受け温度を急激に上昇させます。一般的に、軸受け内部空間の1/3〜1/2程度の充填量が適正とされています。

注意:グリース補給の「とりあえず追加」は逆効果になるケースがある 発熱しているからといって、グリースを追加補給すると、過剰充填をさらに悪化させる場合があります。補給前に現在の充填量と軸受け状態を確認することが重要です。

原因③:グリースの劣化・汚染(水分・異物混入)

長期間使用したグリースは、酸化・蒸発・せん断によって潤滑性能が低下します。また、水分や切削粉・ダスト・異物が混入したグリースは、軸受け内部で腐食や摩耗を引き起こし、発熱につながります。

特に、食品工場・化学プラント・野外設備など、水分や粉塵が多い環境では、グリースの劣化・汚染速度が速くなる傾向があります。補給インターバルの見直しや、防水・防塵性能の高いグリースへの変更が有効です。

原因④:グリースの種類(増ちょう剤)が軸受けや環境に合っていない

グリースは基油と増ちょう剤(石けん系・非石けん系など)の組み合わせで特性が大きく異なります。耐熱性・耐水性・せん断安定性などの特性が用途に合っていないと、性能不足から発熱が起きます。

たとえば、高温環境でリチウム系グリースのみを使用していると、高温でのグリース流出や酸化が進みやすくなります。そのような場面ではウレア系(ポリウレア系)など耐熱性の高いグリースへの変更が検討されます。

代表的なグリースの増ちょう剤と特徴 リチウム系:汎用性が高く最もよく使われる。耐熱性は120〜130℃程度。
ウレア系:耐熱性に優れ150〜180℃でも安定。高温設備に多用。
カルシウム系:耐水性が高く、湿潤環境向き。耐熱性は低め。
複合リチウム系:リチウム系の改良版で耐熱・耐荷重性を向上させたタイプ。

グリース選定と管理の正しい手順

軸受けの異常発熱を根本から解決するには、原因に対応したグリース選定と管理サイクルの見直しが必要です。以下にステップごとの対処手順を示します。

ステップ①:運転条件を整理して適正粘度を確認する

まず、対象軸受けの運転回転数・荷重・温度環境・使用環境(水分・粉塵の有無)を整理します。軸受けメーカーが提供するdn値(軸受け内径mm × 回転数rpm)を参考に、適正な基油粘度を確認することが出発点です。

設備仕様書や軸受けメーカーのカタログに推奨グリース種別が記載されている場合はそれを優先します。記載がない場合や現行グリースで発熱が続く場合は、潤滑剤の専門家への相談を検討する価値があります。

ステップ②:適正な封入量を確認・調整する

現在のグリース充填量を確認し、過剰充填が疑われる場合は古いグリースをいったん除去した上で適正量を再充填します。

一般的な目安として、グリース封入量は軸受け内部空間容積の1/3〜1/2が適正とされています。低速・高荷重の設備では2/3程度まで充填するケースもありますが、高速回転の軸受けでは1/3以下に抑えることが多いです。

封入量の目安(軸受け内部空間容積比) 高速回転(モーター・工作機械主軸):1/4〜1/3程度
中速・中荷重(汎用機械):1/3〜1/2程度
低速・高荷重(圧延機・搬送設備):1/2〜2/3程度
※設備・軸受けメーカーの推奨値を必ず確認すること

ステップ③:グリースの種類を運転環境に合わせて選定する

現行グリースの増ちょう剤の種類と、使用環境を照らし合わせて、必要であればグリース種類の変更を検討します。

使用環境・条件 推奨グリースの種類 主な理由
高温環境(炉・乾燥機周辺など) ウレア系、複合リチウム系 耐熱性が高く、高温でも流出・変質しにくい
湿潤・水がかかる環境 カルシウムスルフォネート系、ウレア系 耐水性・耐洗い流し性が高い
粉塵・異物が多い環境 ちょう度が硬めのグリース(NLGI #2〜3) 異物を取り込みにくく、密封性を保ちやすい
高速・軽荷重(モーター・電動工具) 低粘度基油のリチウム系・ウレア系 攪拌抵抗が小さく発熱を抑えられる
食品機械・医薬品製造設備 食品機械用グリース(NSF H1認証品) 万一の食品接触を考慮した安全性基準に適合

ステップ④:グリース切り替え時の注意点

グリースを別種類のものに変更する際は、増ちょう剤の相性に注意が必要です。異なる増ちょう剤のグリースを混合すると、急激な軟化や分離が起こるケースがあります。グリースを切り替える際は、既存グリースを除去してから補給することをお勧めします。

また、切り替え直後は新しいグリースが軸受け全体に行き渡るまでの慣らし運転の段階で、一時的に温度が上昇する場合があります。これはある程度正常な挙動ですが、異常な高温が続く場合は選定を再確認します。

ステップ⑤:補給インターバルと定期点検の見直し

グリースの補給インターバルは、回転数・温度・荷重・環境条件によって大きく変わります。高温・高速・汚染の多い環境では、通常よりも短いインターバルでの補給が必要です。

また、定期点検時に以下を確認する習慣をつけることで、発熱の再発を防ぎやすくなります。

  • 軸受け表面温度のモニタリング(放射温度計や温度センサーの活用)
  • グリースの色・状態の確認(黒化・水分混入・異物混入の有無)
  • 異音・振動の有無(ごろごろ音・金属音は軸受け損傷のサイン)
  • 漏れ・飛散の有無(シール劣化・過充填のサイン)
  • 補給量の記録(次回補給量の適正化に役立てる)
合成油グリースへの切り替えが特に効果的なケース 高温・高速・長寿命化の要件が重なる軸受けでは、鉱物油ベースのグリースよりも合成油(PAO・エステル系など)ベースのグリースへの変更が有効な場合があります。補給インターバルの延長やグリース消費量の削減といった効果も期待できます。詳しくは専門家への相談をお勧めします。

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よくある質問(FAQ)

軸受けの発熱は、どこまでなら正常の範囲ですか?
一般的には、軸受け表面温度が周囲温度より40〜50℃以上高い場合、または運転中に急激に温度が上昇している場合は要注意のサインです。ただし、設備や軸受けの種類・運転条件によって許容範囲は異なりますので、軸受けメーカーの仕様や設備の運転実績と照らし合わせて判断することが重要です。継続して高温が続く場合は、グリースの選定や封入量の見直しを検討されることをお勧めします。
グリースを多めに入れておけば発熱を防げると聞いたことがあるのですが、本当ですか?
これは誤解です。グリースの過剰充填は、軸受け内部での攪拌抵抗を増大させ、かえって発熱を招く原因になります。適正な封入量はおおむね軸受け内部空間の1/3〜1/2程度です。高速回転の軸受けほど少な目に、低速・高荷重の軸受けでは多めに設定する傾向がありますが、正確な量は設備・軸受けメーカーの推奨値を基準にすることが大切です。
異なるメーカーのグリースを混ぜて使っても問題ないですか?
増ちょう剤の種類が同じであれば混合できる場合もありますが、異なる増ちょう剤のグリースを混合すると、急激な軟化や分離が起こるケースがあります。グリースを切り替える際は、既存グリースを除去してから補給することをお勧めします。不明な場合は、グリースメーカーまたは潤滑剤の専門家に相談することが安全です。
グリースの補給インターバルはどのように決めればよいですか?
軸受けの回転数・荷重・使用温度・環境条件(水分・粉塵の有無)を考慮して決定します。軸受けメーカーが補給インターバルの計算式を公開している場合が多いので、それを参考にするのが一般的です。高温・高速・汚染環境では標準より短いインターバルが必要です。また、初期段階では短めのインターバルで実際のグリース状態を確認しながら、適正なサイクルを見つけていくアプローチが現実的です。
現場でグリースの劣化を確認する簡単な方法はありますか?
現場での簡易確認として、グリースの色・状態の目視確認が有効です。正常なグリースは均一な色をしていますが、黒化(酸化・汚染)・水分混入による白濁・分離(油分が分離してべたつく)が見られる場合は劣化・汚染のサインです。より詳しい分析には、グリースサンプルを採取してオイル分析に出す方法があります。定期的な分析によって、最適な補給インターバルや交換時期を科学的に判断することが可能です。

まとめ

  1. 軸受けの異常発熱は、グリースの粘度不一致・過剰充填・劣化汚染・種類の不適合の4つが主な原因。
  2. まず運転条件(回転数・荷重・温度・環境)を整理し、それに合った基油粘度と増ちょう剤の種類を選定することが重要。
  3. グリースの封入量は軸受け内部空間の1/3〜1/2が基本。過剰充填は攪拌発熱の原因になるため注意が必要。
  4. グリース切り替えの際は、既存グリースを除去してから新しいグリースを補給することが推奨される。
  5. 定期的な温度モニタリング・グリース状態確認・補給記録の管理が、再発防止の基本サイクルとなる。
グリース選定に迷ったら専門家へ 「現行グリースで発熱が収まらない」「そもそも何が合っているかわからない」という場合は、設備・運転条件をもとにした適油診断が有効です。
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この記事を書いた人
フミ
近畿インペリアル株式会社 営業部 主任

工業用潤滑剤の専門商社に5年間勤務。適油選定・オイル分析サポートから現場での更油作業まで自ら担当し、鉄鋼・食品・プラントなど多業種の設備保全を支援。営業担当としてお客様と現場に向き合い続けた実体験をもとに、「現場の担当者が本当に知りたいこと」を軸に記事を執筆しています。

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