オイル分析とは?目的・メリット・実施タイミングを潤滑商社が解説
オイル分析は、潤滑油の状態を数値で見える化し、設備の異常兆候を早期に発見するための診断手法です。この記事では、オイル分析の目的・得られるメリット・最適な実施タイミングを、潤滑剤の専門商社の視点からわかりやすく解説します。
オイル分析とは何か(目的と仕組み)
オイル分析とは、稼働中の設備から採取した潤滑油を試験室で測定・解析し、油そのものの劣化状態と、設備内部の摩耗状況を数値で把握する診断手法です。人間の健康診断における血液検査に近い役割を果たします。
設備を分解せずに内部の状態を推定できるため、保全業務の効率化と突発故障の防止に大きく貢献します。オイル分析は予知保全(CBM=状態基準保全)の中核を担う技術であり、近年は多くの製造現場で導入が進んでいます。
オイル分析でわかること①:潤滑油自体の劣化
潤滑油は使用環境や運転時間に応じて徐々に劣化します。劣化が進んだ油を使い続けると、潤滑性能が低下し、設備の摩耗や焼付きにつながります。
潤滑油の劣化診断における主な測定項目は以下のとおりです。
- 動粘度(油のサラサラ・ドロドロ具合)
- 全酸価(油の酸化進行度)
- 水分量(混入水の有無)
- 不溶解分(スラッジやカーボンの量)
- 添加剤の残存量
オイル分析でわかること②:設備内部の摩耗状況
油中には、摩耗によって発生した金属粉や、外部から混入した異物が含まれます。これらを分析することで、設備のどの部位が摩耗しているかを推定できます。
オイル分析でわかること③:汚染レベル(清浄度)
油圧作動油などでは、油中に含まれる微粒子の数とサイズを測定し、清浄度を等級で評価します。清浄度の悪化は、油圧バルブの誤動作やサーボ系統のトラブルに直結するため、特に油圧設備では重要な指標になります。
ISO 4406とNAS等級の違い
清浄度評価の代表的な国際規格がISO 4406です。4μm/6μm/14μmの3つの粒径区分ごとに、油1mL中の粒子数をコード化して表現します。一方、米国発祥のNAS等級(NAS 1638)は粒径区分ごとの粒子数で等級を決める旧来規格で、日本国内の油圧業界では現在も併用されています。新規導入時はISO 4406での管理が推奨されますが、既存設備の管理値がNAS等級で運用されているケースもあるため、両規格の理解が必要です。
主な分析項目と用途の早見表
| 分析項目 | わかること | 主な用途 |
|---|---|---|
| 動粘度 | 油の劣化・希釈・異種油混入 | 全潤滑油共通 |
| 全酸価(TAN) | 酸化劣化の進行度 | タービン油・作動油・潤滑油 |
| 水分 | 水混入の有無 | 作動油・ギヤ油・タービン油 |
| 摩耗金属元素 | 摩耗部位の特定 | ギヤボックス・エンジン・コンプレッサ |
| 清浄度(ISO 4406) | 異物混入レベル | 油圧作動油 |
| 赤外吸光(FT-IR) | 添加剤残量・酸化生成物 | 長期使用油の状態評価 |
オイル分析を実施する4つのメリット
オイル分析を定期的に実施することで、設備保全の精度が大きく向上します。ここでは現場でよく実感される4つのメリットを解説します。
メリット①:突発故障の防止
摩耗金属量の推移を追うことで、ベアリングやギヤの異常摩耗を初期段階で察知できます。突発停止に至る前に部品交換や運転条件の見直しを行えるため、生産ロスの削減につながります。
メリット②:油の交換時期(更油時期)の最適化
「カレンダー基準」での定期交換から、「状態基準」での更油判断へ切り替えることで、まだ使える油の廃棄を減らせます。逆に劣化が早い設備では、想定より早い交換が必要なケースも見つかります。
メリット③:トラブル原因の特定
異常振動・温度上昇・油漏れなどの不調が発生した際、オイル分析の結果は原因究明の有力な手がかりになります。摩耗金属の種類や水分量から、どの部位に何が起きているかを推定できるためです。
メリット④:適油選定の根拠づくり
「現在使用している油が、本当にこの設備に合っているのか」を客観的に判断するための材料になります。分析結果をもとに、どのような油種に切り替えるべきかを検討できます。
