潤滑油の正しい保管・取り扱い方法|劣化を防ぐ7つのポイント
納品されたばかりの新油でも、潤滑油の保管や取り扱いの方法しだいで、設備に使う前に品質が落ちてしまうことがあります。保管環境に潜む水分や異物の混入は、軸受やギヤの摩耗・トラブルの引き金になりかねません。本記事では、ドラム保管で品質が劣化する主な原因を整理したうえで、異物・水分の混入を防ぐ具体的な保管・取り扱いのポイントを7つに分けて解説します。日々の在庫管理や給油作業を見直すヒントとしてご活用ください。
潤滑油の品質が保管中に劣化する4つの原因
潤滑油の不具合というと、設備で使用中に起こる劣化を思い浮かべがちですが、実際には使う前の保管段階で品質が損なわれているケースが少なくありません。まずは、保管・取り扱いの過程で品質が低下する代表的な4つの原因を整理します。
| 劣化要因 | 主な発生原因 | 設備への影響 |
|---|---|---|
| 水分混入 | 呼吸作用・結露・天面の水たまり | 乳化・油膜切れ・軸受の腐食やさび |
| 異物混入 | 開封時の粉じん・汚れた給油器具 | アブレシブ摩耗・フィルタ目詰まり |
| 酸化劣化 | 高温・直射日光・長期保管 | スラッジ・酸価(TAN)上昇・粘度変化 |
| 銘柄取り違え | ラベル退色・容器の使い回し | 粘度・性状の不一致による性能低下 |
原因① 水分の混入(呼吸作用と結露)
保管中の品質劣化でとくに見落とされやすいのが水分の混入です。ドラム缶は栓を締めていても完全な密閉容器ではなく、温度変化にともなって内部の空気が出入りします。
日中に温められたドラムが夜間に冷えると、内部の空気が収縮し、わずかな隙間から外気とともに湿気を吸い込みます。この呼吸作用が繰り返されると、吸い込んだ湿気が油中で結露し、少しずつ水分が蓄積していきます。ドラム天面に水がたまっていると、栓部から直接吸い込むリスクも高まります。
油中に水分が入ると、添加剤の加水分解や乳化が起こり、油膜が形成されにくくなって油膜切れや軸受のさび・腐食につながります。新油でも保管環境によっては規格の水分値を上回ることがあるため、注意が必要です。
原因② 異物・固形粒子の混入
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開封・給油の作業時に持ち込まれる異物・固形粒子も、見過ごせない劣化要因です。栓のまわりに付着した粉じん、汚れた給油ポンプやオイルジョッキ、ウエスの繊維などが混入経路になります。
新油は「最初からきれい」と思われがちですが、輸送・保管の過程でISO 4406で表す清浄度コードが悪化していることがあります。粒子状の夾雑物はアブレシブ摩耗やフィルタの早期目詰まり、油圧機器のすきま部での動作不良を招きます。
原因③ 温度・直射日光による酸化劣化
高温環境や直射日光は、潤滑油の酸化劣化を進行させます。一般に、油温が10℃上昇すると酸化の進行速度はおよそ2倍になるとされ、屋外でドラムの天面が高温にさらされる保管状態は劣化を早めます。
酸化が進むと酸価(TAN)が上昇し、スラッジの生成や粘度の変化を引き起こします。長期間在庫が滞留している油ほど、この影響を受けやすくなります。
原因④ 銘柄の取り違え・異種油の混合
複数の潤滑油を扱う現場では、銘柄の取り違えや異種油の混合も品質トラブルの一因です。ラベルの退色で銘柄が判別できなくなったり、給油容器を使い回したりすると、粘度グレードの異なる油や相性の悪い油が混ざる恐れがあります。
鉱物油と合成油、添加剤系統の異なる油が混ざると、本来の性状が変わり、所定の性能を発揮できないケースがあります。容器・ポンプの専用化とラベル管理が、混合を防ぐ基本になります。
