清浄度を数値で管理する — ISO 4406・NAS等級と5つの対策
油の清浄度管理の核心は、清浄度を数値化し、設備ごとに「目標値(ターゲット)」を決めて、その範囲に収まるよう維持・改善することにあります。ここでは、代表的な2つの指標であるISO 4406 とNAS等級 の読み方、目標値の決め方、そして清浄度を保つための実務を順に見ていきます。
ISO 4406コードの読み方(4μm/6μm/14μm)
ISO 4406 は、油1mL中に含まれる粒子の数を、3つのサイズごとにコード化した国際規格です。現行の方式では、4μm以上・6μm以上・14μm以上 の粒子数をそれぞれカウントし、「18/16/13」のように3つの数字で表します。左から順に、4μm以上・6μm以上・14μm以上に対応します。
各数字は粒子数そのものではなく、粒子数が収まる「範囲」を表すコードです。重要なのは、コードが1つ増えるごとに粒子数の範囲が約2倍になる という対数の関係です。つまり「18」と「16」では、わずか2コード差でも粒子数は約4倍違うことになります。数字が大きいほど汚れている、という点を押さえておけば、レポートの読み違いを防げます。
ISO 4406 コード番号と1mLあたりの粒子数の範囲(抜粋)
コード番号 1mLあたりの粒子数の範囲
22 20,000〜40,000
20 5,000〜10,000
18 1,300〜2,500
16 320〜640
14 80〜160
13 40〜80
12 20〜40
ポイント:コード「18/16/13」の意味
18/16/13は、4μm以上の粒子が1mLあたり1,300〜2,500個 、6μm以上が320〜640個 、14μm以上が40〜80個 含まれることを示します。粒子計測には自動粒子計数器(APC)が用いられ、校正の基準としてはISO 11171 が広く使われています。
NAS等級(NAS 1638)の考え方とISO 4406との関係
NAS等級(NAS 1638) は、もともと米国の航空宇宙分野で生まれた清浄度規格で、油圧分野を中心に日本でも長く使われてきました。ISO 4406が粒子の「累積数」でコード化するのに対し、NAS 1638は5〜15μm/15〜25μm/25〜50μm/50〜100μm/100μm超 という区分ごとの粒子数(100mLあたり)で評価し、最も汚れているサイズ区分の値をその油の等級(クラス00〜12)とするのが一般的です。数字が小さいほどきれいで、クラス0や00が最もクリーンな状態を表します。
注意:ISO 4406とNAS等級の換算は「目安」
ISO 4406とNAS等級は、測定の考え方(累積数か区分ごとか)も粒子サイズの区切りも異なるため、両者を厳密に1対1で変換することはできません 。換算表は実務上の目安として参考になりますが、管理値を決める際は、どちらの指標で運用するかを社内で統一しておくことをお勧めします。なお、NAS 1638は規格としてはSAE AS4059へ移行(実質的に旧規格化)していますが、現場では引き続き広く使われています。
目標清浄度(ターゲット)の決め方
目標清浄度は、すべての設備で一律に決めるものではありません。基本的な考え方は、その系統の中で最も汚れに弱い部品(サーボ弁など)の要求清浄度に合わせる ことです。一般的な目安として、以下のような水準が参考にされています。ただし、設備メーカー(OEM)が清浄度を指定している場合は、その推奨値が優先されます。
設備タイプ別のISO 4406目標清浄度の一般的な目安
設備・用途 ISO 4406の目安
サーボ弁を含む高精度油圧 16/14/11 程度 以下
一般的な油圧システム 18/16/13 程度
ギア・軸受の循環給油 19/17/14 程度
上表はあくまで一般的な目安であり、OEM推奨値や運転条件(温度・負荷・使用環境)によって適切な水準は変わります。
効果的な進め方:まず現状値を知る
目標を決める前に、まずは現状の清浄度を測定し、設備ごとの「今の値」を把握することが出発点になります。現状値と目標値のギャップが分かれば、ろ過の強化が必要なのか、更油や発生源対策が必要なのか、打ち手の優先順位を判断できます。傾向管理 (定期測定による経時変化の把握)と組み合わせると、悪化の兆候を早期に捉えられます。
清浄度を保つ・改善する5つの実務
目標清浄度を達成・維持するための実務は、大きく次の5つに整理できます。
① 新油の清浄度管理: 受け入れ時に清浄度を確認し、必要に応じてろ過してからタンクへ。「新油=クリーン」と決めつけないことが第一歩です。
② ろ過の最適化: フィルタのろ過精度はβ値(βx) で評価します。稼働中の系統に加え、オフライン(キドニーループ)ろ過で清浄度を底上げする方法も有効です。
③ 防塵対策: タンクの呼吸口にエアブリーザー (吸湿・防塵タイプ)を設置し、シールやパッキンを点検して外部からの侵入を抑えます。
④ 正しいサンプリング: 運転中に配管の代表点から、清浄なボトルで採取します。採取方法が不適切だと、数値そのものが信頼できなくなります。
⑤ 傾向管理: 単発の測定値で一喜一憂せず、定期測定で経時変化を追います。清浄度の上昇傾向は、汚染源やろ過能力の問題を示すサインです。
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よくある質問
ISO 4406とNAS等級は、どちらを使えばよいですか?
どちらでも管理は可能ですが、現在は国際的にISO 4406が主流になりつつあります。一方、油圧分野ではNAS等級が根強く使われており、設備メーカーの指定や社内の過去データとの整合を優先するのが現実的です。大切なのは、社内で指標を統一し、同じものさしで継続的に比較できる状態にしておくことです。
清浄度はどのくらいの頻度で測定すべきですか?
設備の重要度や運転条件によりますが、重要設備では定期的な傾向管理を行うのが一般的です。新油投入後、フィルタ交換後、トラブル発生時などの「節目」で測定すると、変化を捉えやすくなります。単発の値よりも、経時的な推移を追うことに意味があります。
フィルタを細かくすれば清浄度は上がりますか?
ろ過精度を上げれば清浄度は改善しやすくなりますが、目詰まりによる差圧上昇やバイパス流れに注意が必要です。フィルタはろ過精度(β値)と流量・差圧のバランスで選ぶもので、闇雲に細かくすればよいわけではありません。系統全体での発生源対策と組み合わせることが効果的です。
新油なのに清浄度が悪いのはなぜですか?
新油でも、製造・輸送・保管の過程で粒子が混入していることがあり、目標清浄度を満たさない場合があります。受け入れ時に清浄度を確認し、必要に応じてろ過してからタンクへ投入する運用が有効です。「新油はきれい」という前提は、見直す価値があります。
まとめ
油の清浄度管理は、目に見えない汚染粒子(コンタミ)を数値で捉え、摩耗・故障を未然に防ぐための実務である。
ISO 4406は4μm/6μm/14μm以上の粒子数を3つのコードで表し、コードが1つ増えるごとに粒子数は約2倍になる。
NAS等級は区分ごとの粒子数で評価する指標で、ISO 4406との厳密な換算はできないため、社内で指標を統一する。
目標清浄度は、系統内で最も汚れに弱い部品に合わせて設定し、OEM推奨値があればそれを優先する。
清浄度の維持・改善は、新油管理・ろ過・防塵・正しいサンプリング・傾向管理の5つの実務を地道に積み重ねることが基本となる。
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この記事を書いた人
郁(フミ)
近畿インペリアル 営業部 主任
工業用潤滑剤の専門商社に5年間勤務。適油選定・オイル分析サポートから現場での更油作業まで自ら担当し、鉄鋼・食品・プラントなど多業種の設備保全を支援。営業担当としてお客様と現場に向き合い続けた実体験をもとに、「現場の担当者が本当に知りたいこと」を軸に記事を執筆しています。