状態基準保全(CBM)における潤滑診断の役割と活用5ステップ
突発停止は避けたい、しかし時間基準の一律な定期交換ではムダも見落としも残る——多くの保全現場が抱えるこのジレンマを解く鍵が状態基準保全(CBM)と予知保全です。そして、その判断を支える有力な手段が潤滑診断にほかなりません。本記事では、CBM・予知保全における潤滑診断の位置づけ、オイル分析で何が見えるのか、そして現場へ組み込むための具体的なステップまでを整理してお伝えします。
なぜ状態基準保全(CBM)で潤滑診断が重視されるのか
状態基準保全(CBM)は、設備の実際の状態を監視し、必要なときに必要な手当てを行う保全方式です。その判断材料として潤滑油から得られる情報は大きく、振動診断やサーモグラフィと並ぶ状態監視技術の一つとして位置づけられています。まずは保全方式の全体像から整理します。
保全方式の整理——TBM・CBM・予知保全の違い
計画的に故障を防ぐ予防保全は、大きく時間基準保全(TBM)と状態基準保全(CBM)に分かれます。TBMは稼働時間や暦に基づいて一律に手当てする方式で計画は立てやすい一方、設備ごとの実際の状態を反映しないため、まだ使える油や部品を交換するムダや、想定より早い劣化の見落としが起こり得ます。CBMはこの弱点を補い、状態に応じて手当てのタイミングを最適化する考え方です。
予知保全は、CBMで集めた状態データをもとに故障時期や残存寿命を予測し、先回りして対応する取り組みを指します。両者は地続きの関係にあり、潤滑診断のような状態監視がその基盤を支えます。
| 保全方式 | 判断基準 | メリット | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 事後保全(BM) | 故障してから対応 | 計画・運用が単純 | 突発停止や二次被害のリスク |
| 時間基準保全(TBM) | 稼働時間・暦に基づく定期実施 | 計画が立てやすい | 状態に関わらず一律でムダ・見落としが出やすい |
| 状態基準保全(CBM) | 設備の実際の状態 | 延命と突発防止を両立しやすい | 監視技術と判定基準の整備が必要 |
「油は設備の血液」——潤滑油が持つ情報量
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潤滑油は設備内をくまなく循環し、摺動部や軸受の状態を映し出します。油そのものの劣化具合(粘度や酸化)に加え、内部で発生した摩耗粉や混入した水分・異物も油の中に蓄積されるため、油を分析することは設備の健康診断に近い意味を持ちます。人間の健康状態を血液検査で読み取るのと同じ発想です。
潤滑診断では、油の状態(劣化・汚染)と設備の状態(摩耗粉の発生)という二つの軸を同時に把握できます。前者は更油や対策のタイミング判断に、後者は内部の摩耗進行を早期につかむ手がかりになります。
振動診断との関係——競合ではなく補完
CBMでは振動診断が広く使われますが、潤滑診断はこれと競合するものではなく、見える範囲が異なる補完的な技術です。振動診断は軸受や歯車の損傷、アンバランスといった機械的な異常の把握を得意とします。一方で潤滑診断は、油の劣化や汚染、そして表面化する前の初期摩耗の傾向をつかむのに向いています。両者を組み合わせることで、設備の状態をより立体的に捉えられます。
| 監視技術 | 主にわかること | 得意領域 |
|---|---|---|
| 振動診断 | 軸受・歯車の損傷、アンバランス、ミスアライメント | 回転機械の機械的異常 |
| 潤滑診断(オイル分析) | 油の劣化・汚染、摩耗粉の発生状況 | 潤滑状態と初期摩耗の把握 |
| サーモグラフィ | 温度異常・発熱箇所 | 電気設備・過熱の検知 |
近畿インペリアルは創業60年以上・累計約1,000設備以上の導入実績をもとに、複数メーカーから最適品を独立して選ぶ立場で適油選定とオイル分析を支援しています。次章では、潤滑診断を実際のCBM運用に落とし込むステップを見ていきます。

