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フェログラフィー分析とは?摩耗粉5つの形状で故障を見抜く

潤滑コラム

フェログラフィー分析とは?摩耗粉5つの形状で故障を見抜く

公開日:2026/5/28

更新日:2026/7/1

潤滑油中の摩耗粉の形状から設備の異常を早期発見するフェログラフィー分析の基礎と5つの摩耗形態を専門家が解説します。

フェログラフィー分析とは?摩耗粉5つの形状で故障を見抜く方法

設備の異常をもっと早く、確実に捉えたい。油分析の数値は見ているが、何が起きているのか踏み込んで知りたい。そんな保全現場の悩みに応えるのがフェログラフィー分析です。この記事では、フェログラフィー分析の基本と、摩耗粉の5つの形状から故障の前兆を読み解く方法を解説します。摩耗粉の「形」を見る意味がわかれば、突発故障を未然に防ぐ精度が一段上がります。

フェログラフィー分析とは何か、なぜ摩耗粉の形状が重要なのか

フェログラフィー分析とは、潤滑油やグリース中に含まれる摩耗粉を磁気の力で抽出し、観察・測定する設備診断手法です。摩耗粉の大きさ・量・色・そして形状を調べることで、機械内部のどこで、どのような摩耗が進行しているかを推定します。

一般的なオイル分析では、油そのものの状態を調べる性状分析が広く使われています。具体的には、動粘度(油の硬さの変化)、酸価(酸化)(油の劣化度)、水分(水の混入量)、不溶解分・汚染度(固形分やコンタミの量)などを測定し、油が適切な状態を保てているかを判断します。

これらの性状分析は油の劣化や汚染を捉えるのに有効ですが、機械内部で「どのような摩耗が進行しているか」までは直接わかりません。たとえば不溶解分や汚染度が摩耗粉の総量の目安にはなっても、その粉が正常な摩耗によるものか、異常摩耗によるものか、形状までは判別できないのです。

注意:性状分析だけに頼るリスク

動粘度や酸価、汚染度といった性状の数値が正常範囲でも、内部では異常摩耗が静かに進行しているケースがあります。油の状態が健全だからといって、必ずしも機械内部が健全とは限りません。粒子の「形」と「大きさ」を直接見るフェログラフィーが、この見落としを補います。

フェログラフィー分析の基本的な仕組み

フェログラフィー分析には大きく2つの手法があります。1つは分析フェログラフィで、ガラス基板(フェログラム)上に摩耗粉を大きさ順に並べて固定し、顕微鏡で一粒ずつ詳細に観察します。形状や色、材質まで踏み込んで判断できるのが特長です。

もう1つは定量フェログラフィで、抽出した摩耗粉のうち大粒子と小粒子の量を光学的に測定し、その比率から摩耗の進行度を数値で把握します。日常的な傾向管理(トレンド監視)に向いています。多くの現場では、まず定量フェログラフィで異常の兆候を掴み、変化が見られた油を分析フェログラフィで精密に観察するという二段構えで運用されています。

なぜ「形状」を見ることが故障予知につながるのか

摩耗粉は、発生したメカニズムによって特徴的な形をとります。正常な慣らし運転で出る粉と、焼き付き寸前に出る粉とでは、形も大きさもまったく異なります。つまり摩耗粉の形状は、機械内部で起きている現象を映す「指紋」のようなものです。

ポイント:形状は摩耗のメカニズムを語る

摩耗粉の形を読み解けば、単に「摩耗が増えた」だけでなく、正常摩耗なのか、異常摩耗なのか、どの種類の異常なのかまで踏み込んで推定できます。これが状態基準保全(CBM)の精度を高め、突発的な設備停止を防ぐ大きな武器になります。

近畿インペリアルでは、創業60年以上で培った知見と累計約1,000設備以上の導入実績をもとに、オイル分析や設備診断のサポートを行っています。性状分析やフェログラフィー分析を組み合わせた多角的な診断で、現場の保全担当者の判断を支えています。

COLUMN | あわせて読みたい 状態基準保全(CBM)における潤滑診断の役割と活用5ステップ 摩耗粉診断はCBMの一部。潤滑診断全体の役割と導入5ステップを整理して解説します。 詳しく読む → オイル分析ガイドブック(無料)

摩耗粉5つの形状と、そこから見抜く故障の前兆

ここからは、フェログラフィー分析で実際に観察される代表的な摩耗粉を、形状別に5つに分けて解説します。それぞれの形が、設備内部のどんな状態を示しているのかを理解することが、故障予知の核心です。

形状1:正常摩耗粉(ラビング摩耗粉)

もっとも一般的に見られるのが、薄い板状・平らな形をした正常摩耗粉です。大きさはおおむね0.5〜15µm程度で、機械が正常に運転している際に滑り面から発生します。量が安定していれば、設備は健全な状態にあると判断できます。

ポイント:正常摩耗粉は「基準線」

正常摩耗粉の発生量や形状を平常時に把握しておくことが大切です。このベースラインからの変化こそが、異常を早期に察知する手がかりになります。

形状2:切削摩耗粉(カッティング摩耗粉)

らせん状・湾曲した線状・コイル状の形をしているのが切削摩耗粉です。硬い異物や突起が軟らかい金属面を削り取ることで発生し、まるで旋盤の切り屑のような見た目になります。これが多く検出される場合、研磨摩耗(アブレシブ摩耗)が進行しているサインです。

注意:切削摩耗粉が示す異物混入

切削摩耗粉の増加は、外部からの異物(ダスト・硬質粒子)の侵入や、すでに発生した硬い摩耗粉が研磨剤として働いていることを示す場合があります。フィルターやシールの点検、油の清浄度確認を検討する目安になります。

形状3:球状摩耗粉(スフェリカル摩耗粉)

その名の通り、直径1〜5µm程度の小さな球形をしているのが球状摩耗粉です。これは転がり軸受の内部に生じた微小な疲労亀裂(クラック)の中で形成されると考えられており、転がり疲れ(フレーキング)の初期段階を示す重要なサインとされています。

球状摩耗粉は、本格的なはく離が表面化するよりも前の段階で検出できる可能性があるため、軸受の余寿命を推定するうえで注目される摩耗粉です。

形状4:層状摩耗粉(ラミナー摩耗粉)

薄く引き伸ばされ、表面に穴が空いたような形状をしているのが層状摩耗粉です。転がり軸受で転動体が摩耗粉を押しつぶしながら通過することで生じるとされ、転がり疲れの進行を示唆します。比較的大きく、数十µmに達することもあります。

形状5:疲労摩耗粉・大型摩耗粉(ファティーグ/シビア摩耗粉)

厚みのある塊状で、表面がざらついた大型の摩耗粉が疲労摩耗粉です。大きさが20µm以上、ときには数百µmに達することもあり、これが検出された場合は摩耗が深刻な段階に進んでいる可能性が高くなります。歯車や軸受の表面が大きく剥離・損傷している状態を示します。

注意:大型摩耗粉は最終段階のサイン

大型の疲労摩耗粉が急増した場合は、焼き付きはく離(フレーキング)といった深刻な損傷が進行しているおそれがあります。早急に運転状況を確認し、保全計画の見直しを検討すべき段階です。

5つの摩耗粉の特徴を一覧で整理

摩耗粉5つの形状と示唆する設備状態の比較
摩耗粉の種類形状主な大きさ示唆する状態
正常摩耗粉薄い板状・平ら0.5〜15µm正常な運転状態
切削摩耗粉らせん状・コイル状2〜25µm研磨摩耗・異物混入
球状摩耗粉球形1〜5µm転がり疲れの初期
層状摩耗粉薄く穴あき状20〜50µm転がり疲れの進行
疲労・大型摩耗粉厚い塊状20µm以上深刻な疲労・損傷

色や材質からさらに踏み込んで診断する

分析フェログラフィでは、形状に加えても重要な情報になります。たとえば加熱を受けた鋼の摩耗粉は、温度に応じて青や藁色に変色します。これにより、その粉が異常な高温にさらされた場所から出たものかどうかを推定できます。銅合金なら黄色〜赤、アルミなら白っぽいといった具合に、材質ごとの色の違いから発生部位を絞り込むことも可能です。

有益情報:複数の分析を組み合わせる効果

フェログラフィー分析は、動粘度・酸価(TAN)・水分・汚染度といった性状分析と組み合わせることで、診断精度が大きく高まります。形状から摩耗のメカニズムを、性状分析から油そのものの劣化や汚染を多角的に捉えられるためです。

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フェログラフィー分析に関するよくある質問

フェログラフィー分析は、どのくらいの頻度で行えばよいですか?
設備の重要度や運転条件によって異なりますが、まず日常的には性状分析(動粘度・酸価・水分・汚染度)や定量フェログラフィでトレンドを監視し、異常の兆候が見られたタイミングで分析フェログラフィによる精密観察を行う運用が多くの現場で取られています。重要設備では定期的なサンプリングと併用するのが効果的です。
一般的な性状分析があれば、フェログラフィー分析は不要ですか?
両者は補完関係にあります。動粘度・酸価・水分・汚染度などの性状分析は油そのものの劣化や汚染を捉えるのが得意な一方、機械内部でどのような摩耗が進行しているかまでは直接わかりません。フェログラフィーは粒子の大きさや形状を直接観察できるため、深刻な異常摩耗の見落としを防げます。両方を組み合わせることで診断の死角が減ります。
分析フェログラフィと定量フェログラフィの違いは何ですか?
分析フェログラフィは、摩耗粉をガラス基板上に大きさ順に並べて顕微鏡で観察し、形状・色・材質まで詳しく判断する手法です。一方、定量フェログラフィは大粒子と小粒子の量を光学的に測定し、その比率から摩耗の進行度を数値で把握する手法です。日常の傾向監視には定量フェログラフィ、異常時の精密診断には分析フェログラフィが向いており、組み合わせて運用されます。
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まとめ

  1. フェログラフィー分析は潤滑油中の摩耗粉を抽出・観察し、形状・大きさ・色から設備の摩耗状態を診断する手法です。
  2. 一般的な性状分析(動粘度・酸価・水分・汚染度)が捉えにくい「摩耗のメカニズム」を、粒子の形状から直接読み解けます。
  3. 分析フェログラフィ(精密観察)と定量フェログラフィ(量の数値把握)を使い分けることで、効率的な状態監視ができます。
  4. 正常・切削・球状・層状・疲労の5つの摩耗粉形状を読み解くことで、摩耗のメカニズムと進行度を推定できます。
  5. 日常はトレンド監視、異常時は精密観察という二段構えの運用が、突発故障の予防に効果的です。
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郁(フミ)
この記事を書いた人
郁(フミ)
近畿インペリアル 営業部 主任

工業用潤滑剤の専門商社に5年間勤務。適油選定・オイル分析サポートから現場での更油作業まで自ら担当し、鉄鋼・食品・プラントなど多業種の設備保全を支援。営業担当としてお客様と現場に向き合い続けた実体験をもとに、「現場の担当者が本当に知りたいこと」を軸に記事を執筆しています。

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