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リチウムグリースとは?特性・用途・寿命と代替選定5つの視点

潤滑コラム

リチウムグリースとは?特性・用途・寿命と代替選定5つの視点

公開日:2026/6/18

更新日:2026/7/1

リチウムグリースの特性・用途・寿命から、ウレア系など代替グリースの選定基準までを潤滑剤専門商社が解説します。

リチウムグリースとは?特性・用途・寿命と代替選定5つの視点

設備の軸受や摺動部のグリースを選ぶとき、まず候補に挙がるのがリチウムグリースです。流通量が多く汎用性に優れる一方で、「どこまで高温に使えるのか」「寿命や交換の目安は」「リチウムコンプレックスやウレア系とどう使い分けるのか」といった疑問は現場で尽きません。本記事では、リチウムグリースの基本構造と主要特性、代表的な用途と寿命の考え方、そして代替グリースの選定基準までを整理します。日々の適油選定の判断材料としてご活用いただける内容です。

リチウムグリースとは?基本構造と「万能グリース」と呼ばれる理由

リチウムグリースは、増ちょう剤にリチウム石けんを用いたグリースの総称です。耐水性・耐熱性・せん断安定性のバランスに優れ、幅広い設備で使える「万能グリース」として、現在最も多く流通しています。まずは構造と成り立ちから整理します。

グリースの基本構造とリチウム石けん

グリースは大きく「基油」「増ちょう剤」「添加剤」の3要素で構成されます。基油(鉱油や合成油)が潤滑の主役を担い、増ちょう剤がそれをスポンジのように保持して、必要な箇所にとどめる役割を果たします。

リチウムグリースの増ちょう剤には、リチウム石けんと呼ばれる成分が使われます。この石けん繊維が基油をスポンジのように抱え込む構造により、適度な硬さ(ちょう度)と保持性が生まれます。基油には汎用性に優れる鉱油のほか、低温性や酸化安定性を高めたい場合に合成油を用いたタイプもあります。

1938年の登場と普及の背景

かつてグリースは、耐水性に優れるカルシウム石けん基と、耐熱性に優れるナトリウム石けん基を、用途に応じて使い分けるのが一般的でした。1938年にリチウムグリースが開発され、耐水性と耐熱性を両立できるようになって以降、用途を選ばない万能グリースとして急速に普及しました。

リチウムグリースが選ばれ続ける理由

リチウム系グリースは、世界のグリース市場の約66%(2024年時点)を占めるとされています。1種類で幅広い設備をカバーできる汎用性と入手性の高さが、在庫の集約や運用のしやすさにつながり、多くの現場で標準的に使われています。

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リチウムグリースの主要特性とリチウムコンプレックスとの違い

リチウムグリースの実力を理解するうえで押さえておきたいのが、耐水性・耐熱性・せん断安定性という3つの特性と、上位品であるリチウムコンプレックスグリースとの違いです。

耐水性

リチウム石けんは水に対する抵抗性が比較的高く、水滴や湿気がかかる環境でも乳化や流出を起こしにくいのが特徴です。屋外設備や洗浄水のかかる箇所でも使いやすく、汎用グリースとして広く採用される一因になっています。

耐熱性と滴点

グリースは温度が上がると軟化し、ある温度で液状化します。この温度を滴点と呼びます。リチウム石けん基グリースの滴点は約180〜200℃が目安で、実際の常用使用温度はおおむね-20〜130℃の範囲とされます。滴点は「ここまで使える上限」ではなく安全率を見込む指標であり、常用温度は滴点よりかなり低く設定される点に注意が必要です。

せん断安定性(機械的安定性)

軸受内では、グリースが繰り返しせん断(かくはん)を受けます。リチウムグリースはせん断による軟化が比較的少なく、長時間の運転でもちょう度が安定しやすい性質を持ちます。これも汎用グリースとして信頼される理由の一つです。

リチウムグリースとリチウムコンプレックスの違い

より高温・高荷重に対応するために増ちょう剤を複合化したものが、リチウムコンプレックスグリースです。滴点が大幅に高くなり、高温域での性能が向上します。両者の目安を整理します。

リチウムグリースとリチウムコンプレックスグリースの比較(目安)
項目リチウムグリースリチウムコンプレックスグリース
増ちょう剤リチウム石けん複合リチウム石けん
滴点の目安約180〜200℃約260℃以上
常用温度の目安約-20〜130℃約-20〜150℃
得意分野汎用性・コスト高温・高荷重
主な用途一般的な軸受・摺動部高温部位・重荷重部位
注意:滴点=使用上限ではない

滴点はあくまで液状化が始まる温度の目安です。実際の運転では、滴点よりも大きく下回る常用温度の範囲内で使用することが前提になります。連続して高温にさらされる箇所では、リチウムコンプレックスやウレア系など、より耐熱性の高いグリースを検討します。

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主な用途と寿命・交換の考え方

汎用性に優れるリチウムグリースは、多くの設備で標準的に使われています。ここでは代表的な用途とともに、見落とされがちな寿命と交換時期の考え方を整理します。

代表的な用途

常温〜中温域で、過酷すぎない条件の回転・摺動部であれば、リチウムグリースが第一候補になるケースが多くあります。多くの現場で次のような箇所に使われています。

  • 各種転がり軸受・すべり軸受の潤滑
  • モーター・ポンプ・ファンなどの汎用回転機械
  • 搬送装置・コンベヤのローラーや摺動部
  • 屋外設備や水のかかる箇所(耐水性を活かす用途)
  • 一般的な機械の集中給脂システム

一方で、連続して高温になる箇所や、強い衝撃荷重・極低温が想定される箇所では、リチウムコンプレックスやウレア系など、より特化したグリースの方が適する場合があります。

グリースの寿命と劣化要因

グリースは「入れたら終わり」ではなく、使用とともに少しずつ劣化します。主な劣化要因は、基油の酸化、せん断による増ちょう剤構造の崩れ(軟化)、基油の蒸発や離油、そして水分・粉じん・摩耗粉などの異物混入です。これらが進むと、潤滑性能が低下し、油膜切れや発熱、最悪の場合は軸受の焼き付きにつながります。

注意:見た目の変化はトラブルのサイン

グリースが黒ずむ・著しく硬化または軟化する・分離して油が浮くといった変化は、劣化や異物混入が進んでいる可能性を示します。こうした兆候が見られる箇所は、補給のタイミングや交換周期の見直しを検討する価値があります。

交換時期の考え方(傾向管理)

交換時期は、稼働時間や温度から決める時間基準が基本ですが、それだけでは劣化の進み具合を正確に捉えきれない場合があります。そこで有効なのが、状態を継続的に確認しながら判断する状態基準保全(CBM)の考え方です。

抜き取ったグリースの外観・ちょう度・酸価(TAN)・摩耗粉の傾向を記録して比較すれば、劣化や異常摩耗の進行を数値で把握できます。こうした傾向管理を取り入れることで、「まだ使えるグリースを早期に交換してしまう」「劣化を見逃して交換が遅れる」という両方のムダを減らせます。

ポイント:分析で交換判断を裏づける

同じ設備のグリースを定期的に採取し、性状や摩耗粉を分析して傾向で比較することで、交換時期の判断を経験則だけに頼らず裏づけられます。近畿インペリアルでは創業60年以上、累計約1,000設備以上の導入実績をもとに、適油選定からオイル・設備分析までを支援しています。

リチウムグリースの代替選定 — 5つの視点

万能とはいえ、リチウムグリースが常に最適とは限りません。条件が過酷な場合や、近年の原料供給の事情から、代替グリースの検討が現実的な選択肢になってきています。

なぜ代替を検討するのか(供給・コスト)

リチウムは電気自動車(EV)用バッテリーの主要材料でもあり、需要の拡大を背景に炭酸リチウムの価格は2021年から2024年にかけて大きく変動しました。これを受けて、グリース業界では調達リスクを分散するため、リチウムに依存しないウレア系などへの切り替えを検討する動きも出ています。性能面だけでなく、調達の安定性も代替検討の理由になりつつあります。

代替を選ぶ5つの視点

どのグリースが適するかは、設備の条件によって変わります。代替を検討する際は、次の5つの視点で整理すると判断しやすくなります。

  • 耐熱性:常用温度と滴点。高温が続く箇所ほど耐熱性の高いグリースを選ぶ
  • 耐水性・防錆性:水や湿気、洗浄水がかかる環境かどうか
  • 荷重・衝撃:重荷重や衝撃荷重がかかる場合は極圧性(EP性)を重視
  • 速度(dn値)・低温始動性:高速軸受や寒冷環境では基油粘度と低温性が重要
  • コスト・調達安定性:価格だけでなく入手性・供給リスクも含めて評価

主な代替グリースの比較

リチウムグリースの代替候補となる主なグリースの特性を整理します。いずれも製品により幅があるため、あくまで選定の出発点としてご覧ください。

主なグリースの種類と特性の比較(目安。製品により幅があります)
種類増ちょう剤滴点の目安常用温度の目安主な強み留意点
リチウム石けんリチウム石けん約180〜200℃約-20〜130℃汎用性・耐水性・コスト連続高温には不向き
リチウムコンプレックス複合リチウム石けん約260℃以上約-20〜150℃高温・高荷重リチウム同様に供給の影響を受ける
カルシウム石けんカルシウム石けん約90〜100℃約-10〜60℃耐水性・低コスト耐熱性が低い
ウレア(ポリウレア)ウレア化合物約250℃以上約-20〜160℃耐熱・耐水・長寿命リチウム系と相溶しにくい
アルミニウムコンプレックス複合アルミ石けん約200℃以上約-20〜150℃耐水・せん断安定(食品機械用途あり)製品によりせん断で軟化

グリースを切り替える際の注意

注意:増ちょう剤が異なるグリースの混合

異なる増ちょう剤のグリースを混合すると、急激な軟化や分離(離油)が起こり、油膜が形成されにくくなるケースがあります。特にリチウム系とウレア系は相溶しにくいことが知られています。グリースを切り替える際は、既存グリースを除去してから新しいグリースを補給することをお勧めします。切り替え直後は、発熱や漏れがないか経過を確認すると安心です。

よくある質問

リチウムグリースとリチウムコンプレックスグリースの違いは何ですか?
増ちょう剤の構造が異なります。リチウムコンプレックスは増ちょう剤を複合化したもので、滴点が約260℃以上と高く、リチウムグリース(滴点約180〜200℃)より高温・高荷重に強いのが特徴です。汎用用途はリチウム、より過酷な高温部位はリチウムコンプレックス、という使い分けが一つの目安になります。
リチウムグリースは何度まで使えますか?
製品によりますが、常用温度の目安はおおむね-20〜130℃です。滴点(約180〜200℃)は液状化が始まる温度であり、使用上限ではありません。実際には滴点を大きく下回る範囲で使うのが前提なので、連続して高温になる箇所では耐熱性の高いグリースへの変更を検討します。
異なるメーカーのリチウムグリース同士なら混ぜても問題ありませんか?
同じリチウム石けん基同士でも、添加剤や基油の違いにより性状が変化する可能性があります。増ちょう剤の種類が異なる場合は、軟化や離油のリスクが高まります。切り替え時は既存グリースを除去してから新しいグリースを補給し、判断に迷う場合は両製品の適合性を確認することをお勧めします。
リチウムグリースの寿命や交換時期はどう判断すればよいですか?
稼働時間や温度をもとにした時間基準が基本ですが、外観・ちょう度・酸価(TAN)・摩耗粉などを定期的に確認する傾向管理(状態基準保全)を併用すると、より的確に判断できます。黒ずみ・硬化・分離などの変化が見られた箇所は、周期の見直しを検討する目安になります。
リチウムが高騰していると聞きますが、代替グリースは必要ですか?
すべての設備で切り替えが必要なわけではありません。リチウムグリースで十分に機能している箇所は無理に変更する必要はありません。一方で、供給リスクや過酷な使用条件が気になる場合は、ウレア系など、性能と調達安定性の両面から代替を検討する価値があります。

まとめ

  1. リチウムグリースは増ちょう剤にリチウム石けんを用いた汎用グリースで、耐水性・耐熱性・せん断安定性のバランスに優れ、世界のグリース市場の約66%を占めています。
  2. 滴点は約180〜200℃、常用温度は約-20〜130℃が目安。滴点は使用上限ではなく、連続高温部位ではリチウムコンプレックスやウレア系が候補になります。
  3. 用途は汎用回転機械や摺動部が中心。寿命は酸化・軟化・離油・異物混入で進むため、外観や摩耗粉の傾向管理で交換時期を判断するのが有効です。
  4. 代替選定は「耐熱性・耐水性・荷重・速度・コストと調達安定性」の5つの視点で整理すると、設備条件に合ったグリースを選びやすくなります。
  5. 増ちょう剤が異なるグリースの混合は軟化や離油のリスクがあるため、切り替え時は既存グリースを除去してから補給することをお勧めします。
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郁(フミ)
この記事を書いた人
郁(フミ)
近畿インペリアル 営業部 主任

工業用潤滑剤の専門商社に5年間勤務。適油選定・オイル分析サポートから現場での更油作業まで自ら担当し、鉄鋼・食品・プラントなど多業種の設備保全を支援。営業担当としてお客様と現場に向き合い続けた実体験をもとに、「現場の担当者が本当に知りたいこと」を軸に記事を執筆しています。

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