リチウム・ウレア・カルシウムの違いと選定方法
ここからは、設備保全の現場で最もよく目にする3種類のグリース(リチウム系・ウレア系・カルシウム系)の特徴を、選定基準とあわせて整理します。
重要ポイント①:3種類の主要グリースを一覧で比較する
まずは全体像を把握しましょう。以下の表は、増ちょう剤ごとの基本特性をまとめたものです。実際の数値は製品ごとに差があるため、あくまで一般的な傾向としてご覧ください。
リチウム系・ウレア系・カルシウム系グリースの特性比較
| 項目 | リチウム系 | ウレア系 | カルシウム系 |
| 使用温度範囲の目安 | -20℃〜120℃前後 | -20℃〜150℃以上 | -20℃〜70℃前後 |
| 滴点の目安 | 180℃前後 | 250℃以上 | 90〜100℃前後 |
| 耐水性 | 良好 | 良好 | 非常に良好 |
| 機械的安定性 | 良好 | 非常に良好 | やや劣る |
| 主な用途 | 汎用軸受・産業機械全般 | 電動モーター・高温軸受 | 水まわり設備・低速軸受 |
| コスト感 | 標準 | やや高め | 標準〜やや安価 |
重要ポイント②:リチウム系グリースの特徴を理解する
リチウム系は、世界的に最も流通量が多い汎用グリースです。性能・価格・入手性のバランスが良く、特に指定がなければリチウム系が選ばれるケースが多いと言えます。
リチウム系が向いているケース
中温域(〜120℃)の一般軸受、汎用ギアモーター、工作機械の摺動部、自動車のシャシー部品など、特殊な高温・高荷重条件でない設備に幅広く対応します。リチウム複合系を選べば、150℃前後までの高温域にも対応可能です。
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重要ポイント③:ウレア系グリースの特徴を理解する
ウレア系は、増ちょう剤に金属を含まない有機系のグリースです。高温下での耐久性が非常に高く、長寿命グリースとして電動モーター・製鉄設備・自動車補機類などで広く使われています。
- 滴点が250℃以上と非常に高く、高温環境に強い
- 機械的安定性に優れ、長期間使っても柔らかくなりにくい
- 酸化安定性が高く、グリース寿命が長い傾向にある
- 低温下では硬くなりやすい製品もあるため、低温始動には注意が必要
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重要ポイント④:カルシウム系グリースの特徴を理解する
カルシウム系は、耐水性に最も優れたグリースです。一方で滴点が90〜100℃前後と低く、高温環境には向きません。水がかかる港湾設備や食品関連の低速軸受などで活躍します。
ポイント:水まわり設備での実績が豊富
カルシウム系は水に対して乳化しにくく、グリースが流れ出しにくい特性を持っています。屋外設備やウォッシャー機構など、湿潤環境での使用実績が長く、現場での信頼性が高いグリースです。
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重要ポイント⑤:グリースを切り替えるときの注意点
設備に使うグリースを変更する際は、増ちょう剤の互換性に十分な注意が必要です。特に異なる種類のグリースが混ざると、性能が大きく低下するケースがあります。
注意:グリースの混合には注意が必要
異なる増ちょう剤のグリースを混合すると、急激な軟化や分離が起こるケースがあります。グリースを切り替える際は、既存グリースを除去してから補給することをお勧めします。
切り替え時は、可能であれば軸受を分解洗浄してから新しいグリースを充填する方法が最も確実です。分解が難しい設備では、新しいグリースを多めに補給して古いグリースを押し出す「フラッシング」も有効な手段です。
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よくある質問(FAQ)
リチウム系とリチウム複合系は同じものとして扱ってよいですか
いいえ、別の種類として扱うことをお勧めします。リチウム複合系は通常のリチウム系よりも滴点が大幅に高く、耐熱性能が異なります。混合した場合も性状が変化するケースがあるため、製品名と増ちょう剤の正式名称をSDSで確認することが重要です。
ウレア系グリースはリチウム系より優れているのですか
用途次第です。ウレア系は高温耐久性や長寿命性能でリチウム系を上回るケースが多いですが、コストが高く、低温始動性ではリチウム系が優れる製品もあります。設備の運転条件に合わせた選定が重要です。
グリースの色で種類を見分けることはできますか
色は添加剤や顔料によるもので、種類の判別には使えません。例えば「青いグリース」と一口に言っても、リチウム系・ウレア系・カルシウム系のいずれの製品も存在します。種類を確実に把握するには、容器の表示やSDSで増ちょう剤を確認してください。
屋外で水がかかる設備にはどのような種類が適していますか
耐水性に優れたカルシウム系やリチウム複合系が候補になります。設備の温度条件・荷重条件とあわせて検討することが重要です。判断に迷う場合は、現場条件を確認したうえで専門家に相談することをお勧めします。
まとめ
- グリースの種類は主に「増ちょう剤」の違いで分類され、リチウム系・ウレア系・カルシウム系が代表的です。
- リチウム系は汎用性とコストバランスに優れ、中温域の一般軸受に幅広く対応します。
- ウレア系は耐熱性・長寿命性に優れ、電動モーターや高温軸受で活躍するグリースです。
- カルシウム系は耐水性が非常に高く、水まわり設備や低速軸受に適しています。
- 異なる増ちょう剤のグリースを混合すると軟化や分離が起こるケースがあるため、切り替え時は既存グリースを除去してから補給することをお勧めします。
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この記事を書いた人
郁(フミ)
近畿インペリアル 営業部 主任
工業用潤滑剤の専門商社に5年間勤務。適油選定・オイル分析サポートから現場での更油作業まで自ら担当し、鉄鋼・食品・プラントなど多業種の設備保全を支援。営業担当としてお客様と現場に向き合い続けた実体験をもとに、「現場の担当者が本当に知りたいこと」を軸に記事を執筆しています。