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カルシウム系グリースとは?耐水性の強みと2タイプ・他種比較

潤滑コラム

カルシウム系グリースとは?耐水性の強みと2タイプ・他種比較

公開日:2026/6/18

更新日:2026/7/1

水がかかる環境に強いカルシウム系グリースの種類と特性を整理し、リチウムやウレアなど他種グリースとの違い・選び方をわかりやすく解説します。

カルシウム系グリースとは?耐水性の強みと2タイプ・他種比較

港湾設備や屋外の建設機械など、水や湿気にさらされる場所でグリースが流れ出てしまい、頻繁な再給脂に悩まされていないでしょうか。こうした水まわりの潤滑で古くから使われてきたのがカルシウム系グリースです。本記事では、カルシウム系グリースの基本構造と2つのタイプ、最大の強みである耐水性、向いている用途、そしてリチウム系・ウレア系など他種グリースとの違いまでを整理します。自社設備にどのグリースが適しているかを見極める手がかりとしてご活用ください。

カルシウム系グリースとは?基本構造と2つのタイプ

グリースは、潤滑の主役である基油(ベースオイル)に、増ちょう剤と添加剤を加えて半固体状にしたものです。カルシウム系グリースとは、この増ちょう剤にカルシウム石けんを用いたグリースを指します。古くから水まわりの潤滑に使われてきた、歴史のあるグリースです。

グリースの基本構造と増ちょう剤の役割

グリースは大きく、基油・増ちょう剤・添加剤の3要素で構成されます。増ちょう剤はスポンジのように網目状の構造をつくり、その中に基油を保持します。荷重がかかると基油がしみ出して潤滑し、荷重が抜けると再び保持される——この仕組みにより、グリースは油のように流れ落ちずに潤滑部へとどまります。

そして、どの金属石けんを増ちょう剤に使うかによって、グリースの耐水性・耐熱性・寿命といった性格が大きく変わります。カルシウム、リチウム、ナトリウム、ウレアなどの違いは、この増ちょう剤の違いによるものです。

ポイント:性格を決めるのは「増ちょう剤」

同じ基油を使っていても、増ちょう剤がカルシウムかリチウムかで、得意な環境はまったく異なります。グリース選びは、まず増ちょう剤の種類に注目するのが基本です。

① 水和(従来型)カルシウムグリース

もっとも古くからあるタイプで、おもに牛脂系脂肪酸を用い、構造を安定させるために少量の水分を含んでいるのが特徴です。水に強く、防錆性にも優れ、安価という長所があります。一方で、おおむね80℃を超えると含有している水分が分離して石けんと基油が分かれ、構造が壊れてしまうため、目安として約70℃以下、比較的低速・低荷重の一般すべり軸受などに用途が限られます。「カップグリース」と呼ばれることもあります。

注意:従来型は温度の上限に制約

従来型カルシウムグリースは、約80℃を超えると水分が分離して構造が崩れやすくなります。目安として約70℃以下での使用が推奨されるため、高温になる部位には向きません。使用部位の温度を確認したうえで選定することが大切です。

② 無水カルシウムグリース

おもにひまし油系脂肪酸を用い、構造の安定に水を必要としないタイプです。水分を含まずに安定な構造をつくるため、おおむね100℃程度まで使用でき、従来型よりも使用温度の範囲が広いのが特徴です。水に流されにくい耐水性の良さは、カルシウム系に共通する長所です。

カルシウム系グリース2タイプの比較(数値は目安。製品により異なります)
タイプ使用温度の目安耐水性特徴
従来型(水和・牛脂系)約70℃以下非常に高い水分を含む。低速・低荷重・水まわり向き。カップグリースとも呼ばれる
無水(ひまし油系)約100℃まで高い水を含まず安定。使用温度範囲が広い
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カルシウム系グリースの特性|耐水性・防錆性・温度

カルシウム系グリースを選ぶうえで知っておきたい、代表的な3つの特性——耐水性・防錆性・耐熱性——を整理します。

最大の強み:水に流されにくい「耐水性」

カルシウム系グリース最大の強みは、水に流されにくい耐水性です。カルシウム石けんは水に溶けにくいため、水がかかっても乳化(水と混ざって白濁・軟化すること)しにくく、グリースが流出しにくい性質があります。

ポイント:水まわりの潤滑で強みを発揮

ポンプ、屋外設備、洗浄水のかかるラインなど、水がかりの多い部位では、カルシウム系グリースの耐水性が再給脂の手間を減らすことにつながります。後述のナトリウム系とは対照的な特性です。

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防錆性とコストのバランス

耐水性と表裏一体で、防錆性にも優れています。水分が侵入しやすい環境でも金属面を保護しやすく、錆の発生を抑えます。加えて、カルシウム系は比較的安価で、機械的安定性(かくはんされても軟化しにくい性質)も良好なため、コストパフォーマンスを重視する部位で扱いやすいグリースです。

弱点となる「耐熱性」と使用温度の上限

一方で、カルシウム系の弱点は耐熱性です。前述のとおり従来型は約70℃以下、無水タイプでも約100℃が使用温度の目安となり、リチウム系やウレア系と比べると上限は低めです。

注意:高温部位では他種グリースも検討を

高温になる軸受やモーターなどでは、カルシウム系では温度が不足する場合があります。使用部位の最高温度を確認し、上限を超えるようであればリチウムコンプレックスやウレア系も比較検討することをお勧めします。

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他種グリースとの比較と最適な選び方

カルシウム系グリースの位置づけを理解するには、他種グリースと並べて比較するのが近道です。代表的なグリースとの違いと、カルシウム系が活きる用途を見ていきます。

主要グリースとの比較

増ちょう剤の種類ごとに、使用温度の上限と耐水性、得意な用途をまとめました。数値は一般的な目安で、実際は基油や添加剤、製品によって変わります。

主要グリースの増ちょう剤別比較(数値は一般的な目安。製品により異なります)
増ちょう剤使用温度上限の目安耐水性主な用途・特徴
カルシウム(水和)約70℃以下非常に高い安価。低速・低荷重の水まわり
無水カルシウム約100℃高い水を含まず安定。水まわり全般
リチウム約130℃普通〜高い最も普及した汎用グリース
リチウムコンプレックス約150℃高い高温・高荷重に対応
ウレア約150〜180℃高い高温・長寿命。電動機軸受など
ナトリウム約120℃低い(乳化しやすい)高速・高温だが水に弱い

表からわかるとおり、汎用性と温度バランスではリチウム系高温域ではウレア系、そして水まわりの耐水性ではカルシウム系に強みがあります。ナトリウム系は水に弱く乳化しやすいため、水がかりの部位では避けられる傾向があります。

カルシウム系グリースが活きる用途

耐水性という強みから、カルシウム系グリースは次のような部位で多く使われています。

  • 水ポンプ・給排水設備の軸受
  • 港湾設備・船舶など、海水・水しぶきがかかる箇所
  • 建設機械・農業機械の、屋外で水や泥にさらされる部位
  • 製鉄ラインの注水・冷却まわり
  • 洗浄水がかかる食品機械(食品機械用グレードを選定)

選定時に確認したい3つのポイント

グリースを選ぶ際は、増ちょう剤の種類だけでなく、使用条件と照らし合わせて判断します。特に次の3点が重要です。

① 使用部位の温度

最高温度がカルシウム系の上限(水和 約70℃以下・無水 約100℃)を超えないかを確認します。超える場合はリチウムコンプレックスやウレア系を検討します。

② 水・湿気の有無

水がかり・湿潤環境であれば、耐水性に優れるカルシウム系が有力な候補になります。乾燥した一般部位では、汎用性の高いリチウム系も選択肢です。

③ 荷重・速度

高荷重がかかる部位では、EP(極圧)添加剤入りの製品や、耐熱性も求められる場合はリチウムコンプレックス系を検討します。高速回転の部位では、せん断に対する安定性も合わせて確認します。

なお、複数メーカーの製品を横断して最適品を選びたい場合は、独立した立場で適油選定を行う専門商社に相談する方法もあります。近畿インペリアルでも、創業60年以上・累計約1,000設備以上の知見をもとに、現場条件に合わせた潤滑剤選定を支援しています。

よくある質問

カルシウム系グリースとリチウム系グリースは、どう使い分ければよいですか?
大まかには、水や湿気にさらされ温度が高くない部位にはカルシウム系、温度範囲が広く汎用的に使いたい部位にはリチウム系が向いています。リチウム系は使用温度の上限が高め(おおむね130℃前後まで)でバランスに優れる一方、カルシウム系(特に水和)は耐水性に優れる反面、耐熱性に制約があります。水ポンプや屋外設備など水がかりの多い部位では、カルシウム系の強みが活きます。
カルシウム系グリースは食品機械にも使えますか?
用途によります。食品機械には、万一の接触を想定したNSF H1認証などの食品機械用グリースを選ぶ必要があります。カルシウム系にもH1相当の製品はありますが、増ちょう剤の種類だけで判断せず、必ず食品機械用として認証された製品かどうかを確認してください。
今使っているグリースと別の種類を混ぜても問題ありませんか?
増ちょう剤の系統が異なるグリースを混合すると、急激な軟化や分離(離油)が起こり、油膜が形成されにくくなるケースがあります。グリースを切り替える際は、既存のグリースをできるだけ除去してから新しいグリースを補給することをお勧めします。同じ系統であっても、メーカーや基油が異なると相性が変わることがあるため、事前の確認が安心です。
従来型カルシウムと無水カルシウムは何が違いますか?
最大の違いは耐熱性です。水和(従来型)カルシウムグリースは牛脂系脂肪酸を用い、構造安定のために少量の水を含むため、おおむね80℃を超えると水分が分離して構造が崩れやすく、目安として約70℃以下で使われます。無水カルシウムグリースはひまし油系脂肪酸などを用い、水を含まずに安定な構造をつくるため、約100℃程度まで使用できます。

まとめ

  1. カルシウム系グリースは増ちょう剤にカルシウム石けんを使い、従来型(水和)・無水の2タイプがある。
  2. 最大の強みは耐水性で、水洗いや湿潤環境でも流出・乳化しにくい。
  3. 弱点は耐熱性。従来型は約70℃以下、無水型でも約100℃が使用上限の目安。
  4. 水まわりで高温になりにくい部位(水ポンプ・港湾・建設機械など)に適する。
  5. 温度が高い・汎用性を重視する場合はリチウム系やウレア系も検討し、用途に応じて選ぶ。
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郁(フミ)
この記事を書いた人
郁(フミ)
近畿インペリアル 営業部 主任

工業用潤滑剤の専門商社に5年間勤務。適油選定・オイル分析サポートから現場での更油作業まで自ら担当し、鉄鋼・食品・プラントなど多業種の設備保全を支援。営業担当としてお客様と現場に向き合い続けた実体験をもとに、「現場の担当者が本当に知りたいこと」を軸に記事を執筆しています。

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