カルシウム系グリースとは?耐水性の強みと2タイプ・他種比較
港湾設備や屋外の建設機械など、水や湿気にさらされる場所でグリースが流れ出てしまい、頻繁な再給脂に悩まされていないでしょうか。こうした水まわりの潤滑で古くから使われてきたのがカルシウム系グリースです。本記事では、カルシウム系グリースの基本構造と2つのタイプ、最大の強みである耐水性、向いている用途、そしてリチウム系・ウレア系など他種グリースとの違いまでを整理します。自社設備にどのグリースが適しているかを見極める手がかりとしてご活用ください。
カルシウム系グリースとは?基本構造と2つのタイプ
グリースは、潤滑の主役である基油(ベースオイル)に、増ちょう剤と添加剤を加えて半固体状にしたものです。カルシウム系グリースとは、この増ちょう剤にカルシウム石けんを用いたグリースを指します。古くから水まわりの潤滑に使われてきた、歴史のあるグリースです。
グリースの基本構造と増ちょう剤の役割
グリースは大きく、基油・増ちょう剤・添加剤の3要素で構成されます。増ちょう剤はスポンジのように網目状の構造をつくり、その中に基油を保持します。荷重がかかると基油がしみ出して潤滑し、荷重が抜けると再び保持される——この仕組みにより、グリースは油のように流れ落ちずに潤滑部へとどまります。
そして、どの金属石けんを増ちょう剤に使うかによって、グリースの耐水性・耐熱性・寿命といった性格が大きく変わります。カルシウム、リチウム、ナトリウム、ウレアなどの違いは、この増ちょう剤の違いによるものです。
同じ基油を使っていても、増ちょう剤がカルシウムかリチウムかで、得意な環境はまったく異なります。グリース選びは、まず増ちょう剤の種類に注目するのが基本です。
① 水和(従来型)カルシウムグリース
もっとも古くからあるタイプで、おもに牛脂系脂肪酸を用い、構造を安定させるために少量の水分を含んでいるのが特徴です。水に強く、防錆性にも優れ、安価という長所があります。一方で、おおむね80℃を超えると含有している水分が分離して石けんと基油が分かれ、構造が壊れてしまうため、目安として約70℃以下、比較的低速・低荷重の一般すべり軸受などに用途が限られます。「カップグリース」と呼ばれることもあります。
従来型カルシウムグリースは、約80℃を超えると水分が分離して構造が崩れやすくなります。目安として約70℃以下での使用が推奨されるため、高温になる部位には向きません。使用部位の温度を確認したうえで選定することが大切です。
② 無水カルシウムグリース
おもにひまし油系脂肪酸を用い、構造の安定に水を必要としないタイプです。水分を含まずに安定な構造をつくるため、おおむね100℃程度まで使用でき、従来型よりも使用温度の範囲が広いのが特徴です。水に流されにくい耐水性の良さは、カルシウム系に共通する長所です。
| タイプ | 使用温度の目安 | 耐水性 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 従来型(水和・牛脂系) | 約70℃以下 | 非常に高い | 水分を含む。低速・低荷重・水まわり向き。カップグリースとも呼ばれる |
| 無水(ひまし油系) | 約100℃まで | 高い | 水を含まず安定。使用温度範囲が広い |
COLUMN | あわせて読みたい
グリースの種類と特徴|リチウム・ウレア・カルシウムの違いを比較
リチウム・ウレア・カルシウム3種の特性と選定基準、混合時の注意点までを比較。増ちょう剤ごとの向き不向きを一覧で整理しています。
詳しく読む →
カルシウム系グリースの特性|耐水性・防錆性・温度
カルシウム系グリースを選ぶうえで知っておきたい、代表的な3つの特性——耐水性・防錆性・耐熱性——を整理します。
最大の強み:水に流されにくい「耐水性」
カルシウム系グリース最大の強みは、水に流されにくい耐水性です。カルシウム石けんは水に溶けにくいため、水がかかっても乳化(水と混ざって白濁・軟化すること)しにくく、グリースが流出しにくい性質があります。
ポンプ、屋外設備、洗浄水のかかるラインなど、水がかりの多い部位では、カルシウム系グリースの耐水性が再給脂の手間を減らすことにつながります。後述のナトリウム系とは対照的な特性です。
CASE STUDY | 関連する導入事例
港湾アンローダーのオープンギア|グリース垂れ・錆を適油選定で解消
水がかりで流れ落ち・錆に悩む港湾オープンギアを、耐水性の高いグリースへ切替。垂れ・錆とメンテ頻度を大幅に改善した実例です。
事例を読む →
防錆性とコストのバランス
耐水性と表裏一体で、防錆性にも優れています。水分が侵入しやすい環境でも金属面を保護しやすく、錆の発生を抑えます。加えて、カルシウム系は比較的安価で、機械的安定性(かくはんされても軟化しにくい性質)も良好なため、コストパフォーマンスを重視する部位で扱いやすいグリースです。
弱点となる「耐熱性」と使用温度の上限
一方で、カルシウム系の弱点は耐熱性です。前述のとおり従来型は約70℃以下、無水タイプでも約100℃が使用温度の目安となり、リチウム系やウレア系と比べると上限は低めです。
高温になる軸受やモーターなどでは、カルシウム系では温度が不足する場合があります。使用部位の最高温度を確認し、上限を超えるようであればリチウムコンプレックスやウレア系も比較検討することをお勧めします。
